国立がんセンターがん情報サービス

膵がんとは


目 次

1.はじめに
2.症状
3.診断方法
4.病期
5.治療
(1)外科療法  (2)放射線療法  (3)化学療法
(4)その他  (5)集学的治療
6.治療法の選択
7.治療の副作用

参考図書


1.はじめに

   肝臓・胆嚢・膵臓図.肝臓・胆嚢・膵臓
 膵臓から発生したがんのことを一般に膵がんと呼びます。膵臓は胃の後ろにある長 さ20cm程の細長い臓器で、右側は十二指腸に囲まれており、左の端は脾臓に接してい ます。右側はふくらんだ形をしているので頭部と呼び、左端は細長くなっているので 尾部といいます。頭部と尾部との間の3分の1ぐらいの大きさの部分を体部と呼びま す。膵臓の主な働きは、消化液を作ること(外分泌)と血糖を調節するホルモンを作 ること(内分泌)です。膵臓が作る消化液は膵液と呼ばれ、膵臓の中を網の目のよう に走る膵管という細い管の中に分泌されます。細かい膵管は膵臓の中で主膵管という 一本の管に集まり、肝臓から膵頭部の中へはいってくる総胆管と合流した後、十二指 腸乳頭というところへ開いています。肝臓で作られた胆汁と膵臓で作られた膵液はこ うして一緒に十二指腸の中へ流れ込むのです。膵臓で作られるホルモンは血糖を下げ るインシュリンや逆に血糖を上げるグルカゴンなどでこれらは血液の中に分泌されま す。膵臓にできるがんのうち90%以上は外分泌に関係した細胞、特に膵液を運ぶ膵 管の細胞から発生します。これを特に膵管がんといいます。普通、膵がんといえばこ の膵管がんのことを指します。内分泌細胞から発生する膵内分泌腫瘍については別項 目を参照してください。

 日本では毎年1万人以上の方が膵がんで亡くなっています。しかし、残念なことに 、その診断と治療はいまだに難しいことが知られています。膵臓はからだの真ん中に あり、胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆嚢・脾臓などに囲まれているため、がん が発生しても見つけるのが非常に難しいのです。そのうえ、どんな人が膵がんになり やすいのかもあまりわかっていません。また、早い段階では特徴的な症状もありませ ん。このような理由で、胃がんや大腸がんのように早期のうちに見つかるということ はほとんどありません。膵がんとわかった時にはすでに手遅れということが多いので す。早期発見はどのような治療よりも治癒率の向上に貢献しますので、どうしたら早 く発見できるかという研究が意欲的に続けられています。

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2.症状

 膵がん、特に早期の膵がんに特徴的な症状はあまりありません。膵がんの方が病院 へ来られた理由を調べてみますと、最も多いのは胃のあたりや背中が重苦しいとかな んとなくお腹の調子が良くないとか食欲がないなどという漠然としたものです。この ほかに、食欲の低下や体重の減少などもよく起こります。このような症状は膵がんで なくてもいろいろな理由で起こるものです。比較的膵がんに関連のあるものとして、 体や白目が黄色くなる黄疸があります。このときは、体がかゆくなったり尿の色が濃 くなったりもします。黄疸は膵臓の頭部にがんができて胆管が詰まってしまった時に 起こるのですが、胆石や肝炎などが原因の時もあります。

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3.診断

 漠然とした消化器症状の方に対しては、まず超音波検査 (註1)や内視鏡・胃のレ ントゲン検査などを行って、胃炎・胃潰瘍・胆石などの一般的な消化器の病気がない かどうか調べます。超音波検査では膵臓の観察もできますので異常があれば次の検査 に進みます。また、超音波では異常がはっきりしない場合でも、症状や血液検査の データで膵臓や胆管などに病気のある可能性がある場合にはX線CT (註2)やMR I(註3)など超音波以外の方法で体の断面を観察すること のできる検査を行います。また、ERCP(註4)という 検査を行う場合もあります。この検査は、胃カメラのような内視鏡を十二指腸まで運び、 前に述べた十二指腸乳頭という膵管と胆管の出口に細い管を差し込んで造影剤を注入 して膵管や胆管の形を調べるものです。この時に、膵液を採取して細胞の検査やがん 遺伝子の検査を行うこともあります。さらに、必要があれば血管造影を行います。 これは、足の付け根の動脈から細い管を差し込んで膵臓やその周辺に向かう動脈に 造影剤を流し、血管の構造や病気による変化を調べるものです。

 黄疸のある場合には、まず超音波検査で胆管が詰まっているかどうかを 確認します。胆管が詰まって太くなっている場合(閉塞性黄疸)には、超音波で観察 しながら肝臓の中の胆管に針を刺し、これを利用して細い管を胆管の中に入れます。 この管から造影剤を注入すると胆管がどこで詰まっているかわかります。これをPT C(註5)といいます。また、この管から胆汁を外に流し出 すことにより黄疸を治療することができます(PTCD:註6)。 PTCDを行っても黄疸が消失するまでには時間がかかりますのでその間に前に述べ たような検査を行って診断を進めて行きます。

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4.病期(ステージ)

 膵がんがどの程度進んでいるかをあらわすには病期(ステージ)というものが使われま す。病期はおおまかに1から4の4段階に分類されています。ただし、日本の膵臓学 会が定めたものと国際的に使われているもの(UICC分類)では内容が多少異なっ ています。現在は両方とも使われているので、それぞれについて説明します。

日本膵臓学会

UICC分類

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5.治療

 膵がんの治療には主なものとして外科療法・放射線療法・化学療法(抗がん剤)の 3つがあります。腫瘍の進行程度と患者さんの全身状態などを考慮してこのうちの1 つあるいはこれらを組み合わせた治療が行われます。

(1)外科療法

 外科療法はがんのあるところを切り取る治療法です。手術法はがんのある場所によ って異なります。膵頭部にがんがある場合は膵頭十二指腸切除といって膵臓の頭部か ら体部の一部にかけてを胃の一部・十二指腸・小腸の一部・胆嚢などとともに切除し ます。膵尾部にがんがある場合には、尾側膵切除といって膵臓の体部・尾部と脾臓を 切除します。がんのある範囲によっては膵全摘という膵頭十二指腸切除と尾側膵切除 を一緒にした手術を行う必要がある場合もあります。

 がんの進行程度によってはがんを取り去ることができない場合もあります。このよ うなときには十二指腸などが詰まって食事がとれなくなるのを防ぐために胃と腸をつ ないだり、黄疸が出ないようにするために胆管と腸をつないだりするバイパス手術を 行うこともあります。

(2)放射線療法

 放射線療法は放射線を患部にあててがん細胞を壊そうとする治療です。通常は体の 外から放射線をあてる外照射を行いますが、手術中にお腹のなかだけに放射線をあ てる術中照射やがんで詰まっているところに管をいれてこの中から放射線をあてる腔 内照射という方法を行うこともあります。

(3)化学療法

 化学療法は抗がん剤を使ってがん細胞を殺そうとする治療です。一般的なのは抗が ん剤を点滴して全身に行き渡るようにする全身化学療法という方法です。この方法では 遠くにある転移にも効果が期待できるという利点がある反面、副作用が起こりやすい という欠点があるので、動脈の中に管を入れて特定の部分に高濃度の抗がん剤を送り 込む動注療法という方法もあります。

(4)その他

 患部の温度を高めてがん細胞を壊す温熱療法や体のがんに対する免疫力を高めてが んの成長を抑える免疫療法などがあります。これらは副作用が少ないという利点があ りますが、単独での治療効果はあまり高くありませんので、他の治療とともに補助的 に用いられるのが普通です。

(5)集学的治療

 膵がんは難しい病気なので、単独の治療では十分な効果のあがらないことが少なく ありません。そのため、上にあげた治療法をいくつか組み合わせて行うこともよくあ ります。これを集学的治療といい、手術+放射線療法+化学療法や放射線+化学療法など の組み合わせが代表的なものです。

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6.治療法の選択

 どのような治療を行うかは、がんの進行度と患者さんの全身状態によって決定され ます。
 がんが膵臓あるいはその近辺に限局している場合は、切除手術あるいは手術を中心 とした集学的治療を行います。がんの範囲は限局しているけれども切除できない理由 がある場合には、放射線治療や放射線と化学療法の組み合わせなどが行われます。こ れらにバイパス手術を組み合わせることもあります。がんが広い範囲にある場合には 抗がん剤による治療を行います。いずれの場合も全身状態があまり良くないためがん に対する治療の負担が大きすぎると考えられる場合には、別の治療を行ったり、痛み のコントロールや栄養の管理など対症的な治療のみに止める場合もあります。

 上にあげたのは比較的標準的な治療ですが、標準的な治療より効果の高い可能性の ある治療法のある場合などには、臨床試験が行われますのでこれを選択することもで きます。臨床試験は施設によって定められた方法で行われますので、その説明を受け た上でご自分の意志で参加するかどうかを決定することになります。

 全身状態に大きな問題がない場合、国立がんセンター中央病院での治療選択の目安を UICCの進行度分類を用いて説明します。

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7.治療の副作用

(1)外科療法

 手術による副作用の程度は手術法によって異なります。例えば、膵臓全体を切除し た場合には糖尿病になりますが、膵臓の一部を残せた場合はもともと糖尿病の傾向が あるのでなければ糖尿病になることはあまりありません。がんのある範囲によっては 腸の動きを調整する神経を残せないことがあり、この場合には下痢を起こしやすくな ります。また、一般に膵臓の頭部をとる手術のほうが、尾側をとる手術に比べ腸をつ ないだりするところが多いため回復するまでの時間がかかります。

(2)放射線療法

 放射線治療の副作用は放射線をかける場所や量によって違います。一般的な副作用 としては嘔気・嘔吐・食欲不振や血液の中の白血球などが減ってしまうことがありま す。腸にたくさんの放射線がかかってしまうと粘膜があれて出血し、便に血が混じっ たり黒色便、あるいは下血することもあります。

(3)化学療法

 抗がん剤の副作用は使用する薬剤によって特徴があります。一般的なのは、食欲不 振や嘔気などの消化器症状や白血球や血小板が減ってしまう血液の異常などです。薬 剤によっては脱毛が起こるものもあります。

副作用に対する対策

 副作用の種類や程度は治療法によって違いますし、同じ治療法でも場合によっ て異なります。多くは対症的な治療でかなり抑えることができます。

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註1.超音波検査
超音波断層診断装置による検査。超音波(周波数が非常に高く耳 に聞こえない音)の反射を利用して体内の断層像を表示する。体に対する障害がほと んどなく、特別な部屋などを必要としないなどの利点があるため、肝臓・胆道・膵臓 ・泌尿器・産婦人科などの診断に広く用いられています。

註2.X線CT
コンピュータ断層撮影(Computed Tomography)のこと。X線によ って得られた情報をコンピューターで処理して体の断面の像を表示する装置。単に CTといえば、これを指します。

註3.MRI
磁気共鳴撮像法(Magnetic Resonance Imaging)のこと。強い磁力を かけると分子の状態によって特別な信号が出ることを利用してCTと同じような断層 像を表示する装置。X線によるCTとは異なった情報が得られます。

註4.ERCP
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography)の こと。説明は本文を参照して下さい。

註5.PTC
経皮経肝胆道造影(Percutaneous Transhepatic Cholangiography) のこと。説明は本文を参照して下さい。

註6.PTCD
経皮経肝胆道ドレナージ術(Percutaneous Transhepatic Cholangiodrainage)の こと。説明は本文を参照して下さい。

註7.リンパ節の群分類
リンパ節を腫瘍のある場所からの解剖学的な距離により分 類したもの。近いほうから順に第1群、第2群、第3群と呼びます。第3群より離れたも のについては番号がついていません。UICC分類ではリンパ節の分類も異なっています。

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参考図書

がん情報サービス(NCC-CIS)以外にがんについて知りたい場合、次の本や冊子が参考に なります。

「最新がん全書」
末舛恵一監修 1991年発行(世界文化社)

「これだけは知っておきたい がん最新情報」
末舛恵一監修 1993年発行(日本放送出版協会)

「からだの科学:がん」
垣添忠生編 1993年発行(日本評論社)

「続々がん治療最前線」
国立がんセンター監修 1993年発行(岩波書店)

「『痛み止めの薬』のやさしい知識」
国立がんセンター監修(財団法人がん研究振興財団)

「胃がん治療のすべて」
笹子三津留編 1995年発行(築地書館)

がんと上手につきあう法
垣添忠生編 1996年発行(日本法制学会)

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国立がんセンター 情報委員会 提供

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                  FAX:03-3542-3495

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